健発第0331001号
平成18年3月31日

各都道府県知事 殿

厚生労働省健康局長

エイズ治療の中核拠点病院の整備について(通知)

 エイズ対策については、「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(平成11年厚生省告示第217号。以下「予防指針」という。)により実施いただいているところである。
 今般、「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針見直し検討会報告書」(平成17年6月13日付け)等を踏まえ予防指針を改正し、平成18年4月1日から適用することとした。
 改正後の予防指針においては、新たに中核拠点病院制度を創設したので、下記の点にご留意いただき、中核拠点病院を中心に、各都道府県内における総合的なエイズ医療体制の確保と診療の質の向上を引き続き図っていただくようお願いする。

1 中核拠点病院制度の目的
  HIV感染者・エイズ患者(以下「患者等」という。)が安心して医療を受ける体制を整備するべく、「エイズ治療の拠点病院の整備について(通知)」(平成5年7月28日健医発第825号。以下「平成5年通知」という。)及び「エイズ治療の地方ブロック拠点病院の整備について(通知)」(平成9年4月25日健医発第678号)等により、エイズ治療に関する医療体制の整備を図ってきたところである。

  しかしながら、特にエイズ治療の地方ブロック拠点病院(全国14箇所。以下「ブロック拠点病院」という。)に患者等が集中しているとの指摘があることから、その状況を改善し、都道府県内において良質かつ適切な医療を受けられるようにするため、新たに中核拠点病院制度を創設することとした。
  中核拠点病院は、都道府県が原則として各都道府県内の拠点病院の中から1箇所選定することとし、国立国際医療センターエイズ治療・研究開発センターの支援を受けるブロック拠点病院は中核拠点病院を、中核拠点病院は拠点病院を、それぞれ支援するものと位置づけ、中核拠点病院を中心に、各都道府県内における拠点病院間の機能分化を含めた医療提供体制の再構築を重点的かつ計画的に図られたい。

 

2 中核拠点病院の機能
中核拠点病院は、平成5年通知により拠点病院に求められる機能を含め、以下の機能を有す。
  なお、(1)については要件を具備することが必要であるが、当面、実情に応じた取り扱いをして差し支えなく、今後、患者数の動向等を踏まえながら体制整備に取り組まれたい。

(1) 高度なHIV診療の実施

  1. HIV診療に十分な経験を有する医師を確保するとともに、外来における総合的なHIV診療が可能となる体制や、関係職種からなるチーム医療体制の整備が図られること
  2. HIV感染者に対する入院医療が可能となる体制を整備すること
  3. 全科による診療体制を確保すること
  4. カウンセリングを提供できる体制を整備すること


(2) 必要な施設・設備の整備

  1. 患者のプライバシーを守ることが可能な外来診療室を設置すること
  2. 病状に応じて、個室への収容が可能であること
  3. 院内感染防止に関する必要な備品を整備すること
  4. その他HIV診療に必要な機器を整備すること

(3) 拠点病院に対する研修事業及び医療情報の提供
都道府県内の拠点病院の医療従事者等に対する各種研修を実施し、エイズ診療にあたる人材の育成を図ること。
 また、各都道府県内の拠点病院やHIV診療・ケアに関する情報を拠点病院の医療従事者に対して提供すること。

(4) 拠点病院等との連携の実施
中核拠点病院は、拠点病院等との連携を進めるため、連絡協議会を設置し、必要な連携調整を図ること。なお、連絡協議会の構成については、一般医療機関や歯科医療機関との連携が図られるよう委員の選任に配慮すること。

 

3 都道府県の役割
(1)  中核拠点病院の選定にあたっては、地域のHIV感染の発生動向に留意しつつ、現行のHIV医療体制を評価した上で、単に中核拠点病院の選定にとどまらず、都道府県内において良質かつ適切なHIV医療を提供する観点から検討を進められたい。

(2) 都道府県は、適切な医療機関の連携を図るため、中核拠点病院が設置する連絡協議会の運営に積極的に関与されたい。

(3) 中核拠点病院や拠点病院の診療の質の向上を図るため、都道府県は、毎年度、研修計画を策定し、その実施にあたって全部又は一部を中核拠点病院に委託されたい。

(4) 都道府県は、患者等に対する歯科診療を確保するため、地域の実情に応じて、診療に協力する歯科診療所との連携を進められたい。そのため、都道府県歯科医師会と連携しながら、研修会等を通じ、HIV・エイズに対する正しい知識と感染防止対策の周知徹底等を図っていくことが求められる。



4 中核拠点病院の選定について
中核拠点病院の選定にあたっては、地域の実情を勘案しつつ、エイズ対策推進協議会等を活用し、都道府県医師会、ブロック拠点病院関係者や患者等の意見を踏まえつつ、選定にあたることが望ましい。
なお、選定の時期及び報告方法等については、別途通知する。