健総発第25号
健疾発第33号
健感発第24号
平成13年4月24日

都道府県 衛生主管部(局)長殿
政令市
特別区
厚生労働省健康局
総務課長
疾病対策課長
結核感染症課長


当面のウイルス肝炎対策に係る体制の充実・整備等について

 ウイルス肝炎の全般的な対策については、昨年11月から本年の3月までの間、外部有識者から構成される「肝炎対策に関する有識者会議」において、これまで行政や学術団体関係機関等によって実施されてきた肝炎対策を総点検しながら、今後の方向性や充実の方策について検討が重ねられてきた。この度、その結果が報告書として取りまとめられたところであり、今後、厚生労働省においては、報告書における提言等を踏まえ、可能な施策から漸次、実施を図ることとしている。
 報告書において提言のあったウイルス肝炎の全般的な対策のうち、保健所等における相談体制の整備等当面の対策については、以下の点に御留意の上、早急に対応いただくようお願いする。


1.基本的認識について

 ウイルス肝炎の中でも、特にC型肝炎については、今後、肝炎ウイルス持続感染者への対応を充実させることが必要であると考える。C型肝炎ウイルス持続感染者には自覚症状がなく、感染に気づいていない者がいると思われること、C型慢性肝炎は肝硬変、肝がんへと移行する可能性があるとともに、加齢に伴い症状が進行するという特色を有すること、感染率には地域特性が見られること等から、国民に自らのC型肝炎ウイルス等の感染の状況を認識する機会を提供するとともに地域の状況等にも配慮し、必要な相談指導や医療を受ける体制の充実・整備を図ることが重要である。


2.普及啓発について

 C型肝炎について正しい知識の普及啓発を行い、感染者又は感染の可能性の高い者が自らの感染状況を認識し、必要な相談指導や医療を受けるよう広く国民に呼びかけるとともに、関係機関との連携等により、多くの国民が正しい知識を入手できるよう努められたい。
 また、C型肝炎に関する問答集である「C型肝炎について(一般的なQ&A)」は、既に地方自治体に配布しているところであるが、保健所等関係機関において十分に御活用いただきたい。なお、問答集は厚生労働省のホームページにも掲載されているので、必要に応じ御利用願いたい。
 さらに、肝疾患についての正しい知識の普及と予防の重要性についての知識を高めることを目的とする「肝臓週間」が、本年は5月21日(月)から27日(日)までの1週間、財団法人ウイルス肝炎研究財団及び社団法人日本肝臓学会の共催により実施される予定であるので、この期間における啓発活動にも一層の御協力をお願いしたい。


3.相談指導について

 相談指導は、感染者等の相談に応え不安の解消に努めるとともに、必要があればスクリーニング検査や診療へと円滑に繋ぐことが重要である。
 相談指導の中心は医療機関と考えられ、体の不調など自覚症状のある方には速やかに医療機関での受診を勧められたい。また、住民健診等においてC型肝炎等の検査を実施している地方自治体においては、これらの機会を利用して保健指導を行っていただきたい。
 その際、地域の身近な相談の場である保健所等における健康相談の実施に当たっては、プライバシーの保護等に配慮いただきたい。
 なお、産業保健分野における健康相談窓口として、地域産業保健推進センターが各都道府県に設置されているので、御活用いただきたい。


4.保健所等におけるスクリーニング検査について

 保健所等における相談の一環として、保健所が自ら、又は他の機関の協力を得て検査を行うことが必要となる事例も予想される。この場合、C型肝炎ウイルス等の感染の有無に関する検査については、相談者が費用を負担して受診することを基本とし、各地方自治体において、遅くとも本年10月までの間に、手数料条例の制定等必要な体制の整備を図っていただきたい。
 なお、これらの体制整備が整うまでの間の臨時の措置として、保健所等における相談者のうち、C型肝炎ウイルスと合わせて、HIV感染可能性のある者については、HIV検査を実施する際に、HCV抗体検査も同時に実施することができることとする。その費用については「エイズ対策促進事業」における予算の範囲内で、本年10月までを限りとして国庫補助を行うこととするので、別添、平成13年4月24日付厚生労働省健康局疾病対策課長通知「保健所におけるHCV抗体検査の実施に係るエイズ対策促進事業の活用について」を参照の上、適切な活用をお願いする。


5.地域における体制等の整備について

 C型肝炎の持続感染者数は地域による違いも大きく、対策にも地域による違いがあるものと承知している。このため、地域の特性に応じた円滑な相談・検査体制が整備されるよう、保健所等における相談、住民に対する普及啓発事業の実施、医療機関との連携の実施等に関し、地域の特性に応じた先駆的又はモデル的な事業を実施する場合には、地域保健堆進特別事業費による補助についても配慮することといたしたいので、先駆的な当該地域のシステムの確立のため活用していただきたい。なお、現在、第1次募集は締め切ったところであるが、第2次募集においては当該趣旨も踏まえた対応を行う予定である。


6.治療支援体制の整備について

 C型肝炎については患者数が多いこと等から、医療機関が機能分担を行い、地域の医療機関全体で診療が行われている。
 さらに、治療困難例等に対応するため、肝臓専門医、肝がん専門医などによる治療支援体制も、今後、必要とされることから、一般医療機関を支える専門医療機関の確保も重要である。
 したがって、地域の中核的な病院においても肝疾患に関する診断・治療等における専門機関的役割を担うことができるよう、概ね二次医療圏ごとに、それぞれ地域の特性に応じた情報の提供体制の充実・強化等に配慮願いたい。
 この点については、国立病院・療養所においても肝疾患を政策医療分野の一つとして位置づけ、国立病院長崎医療センターを中心に肝疾患に関する診断・治療法の開発及び研究に取り組んでいるところであり、これらとの連携にも努めていただきたい。(別紙参照)
 なお、C型肝炎に関する治療としては、近年、急速に知見が集積されつつあり、学会・研究者による分りやすい「治療の指針」が、現在、改定作業中である。これらが、医療機関に迅速に周知されるよう関係機関との連携・協力をお願いする。


7.関係機関との連携について

 C型肝炎ウイルス等の持続感染者に対する差別は、偏見を基礎にしたものであり、地域や職場においてこれらの偏見を排すよう、正しい知識の普及・周知徹底を図る必要がある。
 なお、別途、労働部局から関係機関へも同様の通知を発出し、事業所等に対する周知等を図ることとしているので、十分に連携をとりながら施策の推進に御協力願いたい。

 


(別紙)

肝疾患に係る国立病院・療養所の専門医療施設等