各都道府県
衛生主管部(局)長 殿
各指定都市
健医感発 第14号
平成元年2月10日
一部改正
健医感発第89号
平成6年10月11日
健医感発 第30号
平成7年4月1日
厚生省保健医療局疾病対策課
結核・感染症対策室長

後天性免疫不全症候群の予防に関する法律の運用上の留意事項について

 後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(平成元年法律第2号。以下「法」という。)の 施行については、本日、厚生省発健医第22号をもって厚生事務次官より、健医発第123号をも って厚生省保健医療局長より、それぞれ通知されており、また、後天性免疫不全症候群の予防 に関する法律施行令(平成元年政令第21号)及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律施 行規則(平成元年厚生省令第4号)が定められたところであるが、同法の運用に当たっては特 に下記に掲げる事項に十分留意の上、その円滑、適正な施行につき遺漏なきを期されるととも に、医療関係者その他関係機関等に対する周知方につき、よろしくお願いする。

第1 医師の指示及び報告について
  1. 医師が感染者に対して指示を行うに当たっての具体的な留意点については、昭和62年2月26日付け健医感発第14号厚生省保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長通知「AIDS感染予防に関する留意点について」(以下「AIDS感染予防に関する留意点について」という。)を参照されたいこと。
  2. 感染者であると診断した医師の都道府県知事(指定都市及び中核市の長を合む。以下同じ)への報告は、別添様式1の報告票により行うものとすること。
  3. 法の施行前(平成元年2月16日まで)に感染者であると診断した医師の都道府県知事への報告は、別添様式2の報告票により行うものとすること。
  4. 感染者であると診断した医師は、その診断に係る感染者に
     (1)発病してエイズになった。
     (2)死亡した。
    といった病状の変化があったときは、都道府県知事に、その旨の報告を別添様式3の報告票により行うものとすること。
     なお、この報告は、本日付け健医発第123号厚生省保健医療局長通知「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律の施行等について」第3の4のただし書に掲げられた各通知に基づき、 既に報告が行われている場合についても行うこととし、血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、これを要しないものであること。
  5. 2から4までによる報告は、保健所を経由ぜず、直接都道府県知事に行うこととすること。
  6. 血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる者の配偶者又はこれらの者から出生した子が感染者である場合については、報告を要するものであること。
  7. 感染者の居住地を管轄する都道府県知事と医師の所在地を管轄する都道府県知事とが異なる場合には、医師からの報告は、感染者の居住地を管轄する都道府県知事になされるものであり、報告があった旨を医師の所在地を管轄する都道府県知事その他の都道府県知事に連絡する必要はないものであること。
  8. 都道府県知事は、別添様式1又は別添様式3の報告票による報告については、2ケ月分ごとにとりまとめ、奇数月の10日までに、前月までの分について写しを当職あて送付すること。
     第1回の送付期限は本年5月10日とすること。
  9. 別添様式2の報告票による報告については本年4月末までに写しを厚生省へ送付すること。
  10. 厚生省においては、8により送付された感染者の報告を2ケ月分ごとにとりまとめ、当該データを都道府県(指定都市及び中核市を含む。)に還元する予定であるので、当該データについては、報告を行った当該医療機関に還元されたいこと。
第2 医師から都道府県知事への通報について
  1. 多数の者に感染させるおそれのある感染者についての法第7条第1項の規定による医師から都道府県知事への通報は、別添様式4の通報票により行うものとすること。
  2. 感染者の感染源と認められる者で多数の者に感染させるおそれのある者についての法第7条第2項の規定による医師から都道府県知事への通報は、別添様式5の通報票により行うものとすること。
  3. 1及び2による通報は、保健所を経由せず、都道府県知事に行うこととし、親展の封書による等秘密の保持に十分配慮して行うものとすること。
  4. 都道府県知事は別添様式4又は別添様式5の通報票による通報については、通報があった都度、速やかに写しを当職あて親展の封筒で送付すること。
  5. 感染者の居住地を管轄する都道府県知事と医師の所在地を管轄する都道府県知事とが異なる場合には、医師からの通報は、感染者の居住地を管轄する都道府県知事になされるものであり、通報があった旨を医師の所在地を管轄する都道府県知事その他の都道府県知事に連絡する必要はないものであること。ただし、当該感染者が居住地を移転させた場合等当該通報を受けた都道府県知事が法に規定する措置を行うため必要な場合に関係都道府県知事へ必要な連絡をすることは認められるものであること。

第3 健康診断の勧告について

  法第8条第第1項の健康診断の勧告については、次により行われたいこと。

  1. 医師から法第7条第2項の規定による通報があった場合には、都道府県知事は、必要があれば法第10条に基づく質問により勧告の必要があることを確認した上で、勧告を行うものと  すること。
  2. 勧告に従わないことが法第8条第2項の命令の要件となることから「法第8条第1項の規定に基づき、エイズのウイルス(HIV)感染の有無に関する健康診断を受けるべきことを勧告する」趣旨の明らかな文書を交付することにより行うこと。
  3. 健康診断の内容は、HIVの抗体検査(スクリーニング検査)及び、陽性の場合は確認検査等を行うことにより確定診断を行うこととすること。昭和63年4月14日付け健医感発第26号厚生省保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長通知「サーべイランスのためのAIDS診断基準」を参照すること。
  4. 勧告による健康診断を受けるべき期限は、当事者が健康診断を受けるために必要な期間を勘案して定めるものとし、原則として一週間程度で十分と考えられること。
  5. 勧告による健康診断は、勧吉を受けた者に選択する医師の下で実施されるものであり、一般の自主的受診者と同様その費用は受診者本人の負担すべきものであること。
  6. 健康診断の受診の有無は、当該勧告を受けた者に、受診した医療機関及び受診日を質問すること等により確認すべきこと。

第4 健康診断の命令について

  法第8条第2項の健康診断の命令については、次により行われたいこと。

  1. 健康診断の命令は、知事の行う健康診断の勧告に従わない者に対して行うものであること。
  2. 命令に従わない場合には罰則の適用があることから、「法第8条第2項の規定に基づき、エイズのウイルス(HIV)感染の有無に関する健康診断を受けるべきことを命令する」趣旨の明らかな文書を交付することにより行うこと。
  3. 健康診断の内容については、第3の3と同様とすること。
  4. 命令による健康診断を受けるべき期限は、当事者が健康診断を受けるために必要な期間を勘案して定めるものとし、原則として一週間程度で十分と考えられること。
  5. 命令による健康診断は、勧告による健康診断とは異なり、その結果は法第9条の指示の根拠となるもので、知事の行う予防事務の一環をなすものである。したがって、その費用は法第11条により適用される伝染病予防法第22条及び第25条の規定により都道府県が支弁し、国庫が2分の1を負担するものであること。
  6. 健康診断の受診の有無は、当該命令を受けた者への質問、当該指定を受けた医師への照会等により確認し、検査結果については、当該医師に報告を求めることにより確認すべきこと。
  7. 命令による健康診断は、知事の指定する医師によるものであることを要する。このため、予め、昭和62年3月14日付け健政計発第13号、健医感発第20号厚生省健康政策局計画課長、保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長通知「エイズ対策の推進について」3.(2)の専門相談窓口となっている医療機関等適切な医療機関の医師を選択しておくこと。
第5 伝染防止上必要な指示について

  法第9条の伝染防止上必要な指示については、次により行われたいこと。

  1. 対象者
    (1) 医師から法第7条第1項による通報のあった者
    (2) 法第8条第2項に基づく命令による健康診断の結果、感染者であると確認された者
  2. 指示の内容
    (1) 基本的には、法第5条に基づき医師が行う指示と同様であり
    日常生活において、血液が他人に触れないよう配慮すること
    性的接触において、傷つきやすい性的接触方法や、相手の自分の体液を直接触れさせるような性的接触方法を避け、不特定の相手との性的接触を避けること

    等が考えられること。

    (2) ただし、指示の対象者が、医師の指示に従わず又は医師への受診を拒んで、多数の者に感染させるおそれがある者であることから、特に
    多数の者に感染させるおそれのある行為をしないこと
    一定の医師の下で、その指導に従うべきこと

    が指示の中心的な事項となること。

    (3) 感染者に対して指示を行うに当たっては、「AIDS感染予防に関する留意点についで」を参照されたいこと。
  3. 方法
      指示内容を記載した文書を交付することを原則とする。
  4. 指示内容の徹底の確認
    (1) 指示が守られているかどうかは、当該指示を受けた者に対して質問すること等により確認すべきこと。
    (2) 指示が守られていない場合には、重ねて指示を行うべきこと。
第6 秘密保持について
  1. 感染者に関する秘密を保持することは、感染者の不安を軽減し、エイズ対策を円滑に進めていく上で極めて重要であることから、法の施行に当たって特に留意すること。
  2. 法の施行によって得られた情報の取扱いについては、プライバシーの保護に十分留意し、たとえ公表する必要が生じた場合にも、個人の特定につながる事項は含まないこととすること。
  3. 医師、公務員、及び業務上秘密を知り得た者について、正当な理由なく秘密を洩らした場合については、罰則の適用があること。
  4. 法第14条の「正当な理由」に該当するものとしては、例えば次のものが考えられること。
    (1) 法廷で証言する場合
    (2) 法の規定に基づき都道府県知事へ通報する場合
    (3) 医師が医療従事者の感染防止のため必要な指示を行う場合
    (4) 医療機関の職員等が診療報酬の請求のため病名を付した関係書類を関係機関へ提出する場合
    (5) 医師が救急隊員等の感染防止のため消防機関に連絡する場合

第7 その他

  1. 法に基づく健康診断の勧告、命令、伝染防止上必要な指示及び質問は、原則として医師である職員が担当することとするが、状況に応じて、保健婦その他の職種の者も補助者として担当することとして差し支えないこと。
  2. 法第7条第1項又は第2項の通報のあった事例については、これに対して都道府県知事の採った措置の内容、当該感染者等の現状等を記載した報告を作成し、適宜、当職あて送付されたいこと。
  3. 救急隊員等の感染防止上必要と認められる場合には、医師から必要な連絡通報が消防機関に対してなされることが必要であり、この点について、消防機関から協力依頼があった際には積極的に協力するよう、医療機関を指導されたいこと。
  4. 「AIDSサーベイランス情報の還元・公表方法について」(昭和62年4月20日付け健医感発第30号本職通知)は、本年2月17日をもって、廃止する。