エイズ問題総合対策大綱

昭和62年2月24日決定
平成4年3月19日改正
 エイズのまん延は、欧米及びアジア諸国をはじめ世界的に深刻な状況にあるが、我が国では、エイズ患者の発生は今なお少数にとどまっている。しかしながら、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者の急増、異性間感染の増加、在日外国人感染者の増加など、新たな局面を迎えており、現段階において、積極的かつ重点的な対策を講じ、エイズのまん延の防止を図ることが必要である。
  このため、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(平成元年法律第2号)の円滑な運用を図りつつ、当面、次の事項を重点として、総合的な対策の推進を図る。
 なお、対策の椎進に当たっては、同法の趣旨に則り、プライバシーと人権の保護に十分な配慮を払う。
I 重点対策
  1. 正しい知識の普及
     現段階におけるエイズ対策の基本は、国民がエイズに関する正しい知識を持ち、感染の危険を回避することである。
     このため、エイズ予防のための正しい知識の普及を図る。
    (1) 政府広報等においてエイズ問題を重点的に取り上げるとともに、地域、職域等あらゆるルートを通じ、国をあげて啓発運動を展開する。
    (2) 学校教育における啓発等若い世代のエイズの予防の徹底を図る。
    (3) 海外旅行者、在留邦人及び海外からの入国者に対する啓発を強化する。
  2. 検査・医療の体制の充実
    (1) 国民が迅速にエイズに関する適正な検査が受けられるように、スクリーニング検査(第一次検査)及び確認検査(第二次検査)について各都道府県に所要の検査機関を確保する。 
    (2) プライバシー及び人権の保護に配慮し、国民が安心してエイズに関する検査が受けられるよう、保健所等における匿名検査体制の整備の推進を図る。
    (3) 増加する患者及び感染者が安心して医療が受けられる医療機関を確保するための方策を検討する。
  3. 相談・指導体制の充実及び二次感染防上対策の強化
    (1) 国民及び在日外国人の不安の解消を図るため、エイズに関する相談が容易にできるよう、保健所、公私の医療機関等に相談窓口を整備するとともに、電話相談等を実施する。
    (2) HIVに感染するおそれが大きい、いわゆるハイリスク・グループに対しては、関係省庁が協力して、健康診断の勧奨、保健相談・指導の徹底を図る。
    (3) 患者、感染者及び不安を持つ者に対するカウンセリング体制の充実を図るため、カウンセラーの養成を推進する。
    (4) 血液対策については、既に実施されている全献血への抗体検査を引き続き実施するほか、献血時の問診の強化等を図り、安全確保の一層の徹底を期する。
  4. 国際協力及び研究の推進
    (1) エイズ対策に関し、諸外国との情報交換を強化するとともに、国際的なエイズのまん延の防止対策に参加し、積極的に推進する。 
    (2) エイズについては、未解明、未確率の部分が多いので、国公立及び民間の試験研究機関、大学等を通じ、基礎研究及び予防、検査、治療等に関する研究の組織化、積極的な推進を図るほか、諸外国との研究の交流を行う。
II 推進体制
  1. 国における推進体制
    (1) エイズ対策関係閣僚会議の下に関係省庁からなる幹事会を設置し、関係省庁相互の連携を図りつつ、医療関係者、関係団体等の協力を得て、総合的な対策の推進を図る。 
    (2) エイズ対策に関し、専門的事項について意見を求めるため、エイズ対策関係閣僚会議の下に学識経験者をもって構成するエイズ対策専門家会議を置く。
    (3) 円滑かつ効率的研究の推進を図るため、国際的及び関係省庁間におけるエイズ研究に関する研究協力体制を充実する。
  2. 地方公共団体における推進体制
     地方公共団体に対し、国の体制に応じた推進体制の整備を要請する。
  3. エイズに関する医療・情報センター機能の整備
     エイズに関する情報の集積、研究の連絡調整、広報啓発活動の支援等を行う、エイズ対策推進のためのセンター機能を持つ組織の整備を図る。