感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
(平成15年11月5日法律第145号)

 

第4章 健康診断、就業制限及び入院

(健康診断)
第17条  都道府県知事は、一類感染症、二類感染症又は三類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対し当該感染症にかかっているかどうかに関する医師の健康診断を受け、又はその保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)に対し当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に健康診断を受けさせるべきことを勧告することができる。
 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者について、当該職員に健康診断を行わせることができる。
 都道府県知事は、第1項に規定する健康診断の勧告をし、又は前項に規定する健康診断の措置を実施する場合には、同時に、当該勧告をし、又は当該措置を実施する理由その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。ただし、当該事項を書面により通知しないで健康診断の勧告をし、又は健康診断の措置を実施すべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。
 都道府県知事は、前項ただし書の場合においては、当該健康診断の勧告又は措置の後相当の期間内に、同項の理由その他の厚生労働省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならない。


(就業制限)
第18条  都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症又は三類感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第12条第1項の規定による届出を受けた場合には、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。

 前項に規定する患者及び無症状病原体保有者は、当該者又はその保護者が同項の規定による通知を受けた場合には、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。

 前項の規定の適用を受けている者又はその保護者は、都道府県知事に対し、同項の規定の適用を受けている者について、同項の対象者ではなくなったことの確認を求めることができる。

 都道府県知事は、前項の規定による確認の求めがあったときは、当該請求に係る第2項の規定の適用を受けている者について、同項の規定の適用に係る感染症の患者若しくは無症状病原体保有者でないかどうか、又は同項に規定する期間を経過しているかどうかの確認をしなければならない。

 

(入院)
第19条

 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。

 都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る患者を特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関(同項ただし書の規定による勧告に従わないときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるもの)に入院させることができる。
 前2項の規定に係る入院の期間は、72時間を超えてはならない。
 都道府県知事は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、第1項又は第2項の規定により入院している患者を、当該患者が入院している病院又は診療所以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院させることができる。

 第1項又は第2項の規定に係る入院の期間と前項の規定に係る入院の期間とを合算した期間は、72時間を超えてはならない。

   
第20条  都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者であって前条の規定により入院しているものに対し10日以内の期間を定めて特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該入院に係る患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、10日以内の期間を定めて、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。
2   都道府県知事は、前項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、10日以内の期間を定めて、当該勧告に係る患者を特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関(同項ただし書の規定による勧告に従わないときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるもの)に入院させることができる。

 都道府県知事は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、前2項の規定により入院している患者を、前2項の規定により入院したときから起算して10日以内の期間を定めて、当該患者が入院している病院又は診療所以外の病院又は診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院させることができる。

 都道府県知事は、前3項の規定に係る入院の期間の経過後、当該入院に係る患者について入院を継続する必要があると認めるときは、10日以内の期間を定めて、入院の期間を延長することができる。当該延長に係る入院の期間の経過後、これを更に延長しようとするときも、同様とする。

 都道府県知事は、第1項の規定による勧告又は前項の規定による入院の期間を延長しようとするときは、あらかじめ、当該患者が入院している病院又は診療所の所在地を管轄する保健所について置かれた第24条第1項に規定する協議会の意見を聴かなければならない。


(移送)
第21条

 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、前2条の規定により入院する患者を、当該入院に係る病院又は診療所に移送しなければならない。

 

(退院)
第22条

 都道府県知事は、第19条又は第20条の規定により入院している患者について、当該入院に係る一類感染症の病原体を保有していないことが確認されたときは、当該入院している患者を退院させなければならない。

 病院又は診療所の管理者は、第19条又は第20条の規定により入院している患者について、当該入院に係る一類感染症の病原体を保有していないことを確認したときは、都道府県知事に、その旨を通知しなければならない。
 第19条若しくは第20条の規定により入院している患者又はその保護者は、都道府県知事に対し、当該患者の退院を求めることができる。
 都道府県知事は、前項の規定による退院の求めがあったときは、当該患者について、当該入院に係る一類感染症の病原体を保有しているかどうかの確認をしなければならない。

 

(書面による通知)
第23条

 第17条第3項及び第4項の規定は、都道府県知事が第19条第1項及び第20条第1項に規定する入院の勧告、第19条第2項及び第4項並びに第20条第2項及び第3項に規定する入院の措置並びに同条第四項に規定する入院の期間の延長をする場合について準用する。

 

(感染症の診査に関する協議会)
第24条

 都道府県知事の諮問に応じ、第20条第1項の規定による勧告及び同条第4項の規定による入院の期間の延長に関する必要な事項を審議させるため、各保健所に感染症の診査に関する協議会(以下この条において「協議会」という。)を置く。

 前項の規定にかかわらず、2以上の保健所を設置する都道府県において、特に必要があると認めるときは、2以上の保健所について一の協議会を置くことができる。
 第1項に規定する協議会は、委員3人以上で組織する。
 委員は、感染症指定医療機関の医師、感染症の患者の医療に関し学識経験を有する者(感染症指定医療機関の医師を除く。)及び医療以外の学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が任命する。ただし、その過半数は、医師のうちから任命しなければならない。

 この法律に規定するもののほか、協議会に関し必要な事項は、条例で定める。




(審査請求の特例)
第25条

 第20条第2項若しくは第3項の規定により入院している患者であって当該入院の期間が30日を超えるもの又はその保護者は、同条第2項又は第3項に規定する入院の措置について文書又は口頭により、厚生労働大臣に審査請求(再審査請求を含む。以下この条において同じ。)をすることができる。

 厚生労働大臣は、前項の審査請求があったときは、当該審査請求があった日から起算して5日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
 第20条第2項若しくは第三項の規定により入院している患者であって当該入院の期間が30日を超えないもの又はその保護者が、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)に基づき厚生労働大臣に審査請求をしたときは、厚生労働大臣は、当該審査請求に係る入院している患者が同条第2項又は第3項の規定により入院した日から起算して35日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。
 第20条第2項若しくは第3項の規定により入院している患者であって当該入院の期間が30日を超えないもの又はその保護者が、行政不服審査法に基づき都道府県知事に審査請求をし、かつ、当該入院している患者の入院の期間が30日を超えたときは、都道府県知事は、直ちに、事件を厚生労働大臣に移送し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。
 前項の規定により事件が移送されたときは、はじめから、厚生労働大臣に審査請求があったものとみなして、第3項の規定を適用する。

 厚生労働大臣は、第2項の裁決又は第三項の裁決(入院の期間が30日を超える患者に係るものに限る。)をしようとするときは、あらかじめ、審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。

 

(準用)
第26条

 第19条から第23条まで及び前条の規定は、二類感染症の患者について準用する。この場合において、第19条第1項及び第2項並びに第20条第1項及び第2項中「特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関」とあり、並びに第19条第2項及び第20条第2項中「特定感染症指定医療機関又は第一種感染症指定医療機関」とあるのは「感染症指定医療機関」と、第22条第1項及び第2項中「一類感染症の病原体を保有していないこと」とあるのは「二類感染症の病原体を保有していないこと又は当該感染症の症状が消失したこと」と、同条第4項中「一類感染症の病原体を保有しているかどうか」とあるのは「二類感染症の病原体を保有しているかどうか、又は当該感染症の症状が消失したかどうか」と読み替えるほか、これらの規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。