G8コミュニケ (骨 子)

平成12年7月23日

 

前文

  • サミットが25年間取り組んできた世界の平和と繁栄に関する試練(チャレンヂ)と進 展を振り返り、21世紀のG8の役割を議論。
  • 民主主義、市場経済、社会的発展、持続可能な開発及び人権は明るい21世紀の基盤。
  • グローバリゼーションの深化する世界にあって、開発途上国、国際機関、市民社会との 新たなパートナーシップが重要。
  • 国連ミレニアム・サミットの議論に貢献することを期待。安保理を含む国連改革への努 力を継続。
  • 新しい時代が始まろうとしている。一層の繁栄、心の安寧、そして世界の安定をもたら す21世紀に向けて、希望をもって共に前進しよう。

 

21世紀の一層の繁栄に向けて

世界経済

  • 世界経済は、今年、力強く成長する見込み。
  • アジア経済も回復基調。引き続き改革努力が必要。
  • グローバリゼーションの進展、ITの普及により根本的な構造変化に直面。機会を活用 するために、適切なマクロ経済政策に裏打ちされた構造改革が必要。

 

情報通信技術(IT)

  • ITが提供する機会は万人に開かれていなければならない。
  • 懸念にも取り組んでいく必要がある。
  • グローバルな情報社会に関する沖縄憲章の目的を追求することにコミット。

 

開発

  • 21世紀を万人にとっての繁栄の世紀にするために開発目標にコミット。今なお12億人は1日1ドル以下の生活。
  • 貧困と闘う上で力強い民間主導型経済成長が不可欠。そのために、中小企業や市民社会との協力が重要。
  • 貿易と投資は、持続可能な経済成長を促進し貧困を削減する上で非常に重要。
  • 政府開発援助(ODA)は貧困撲滅に不可欠。各国の貧困削減戦略等の自助努力支援のため援助の効率を高める。

 

(債務)

  • 昨年、ケルンで合意した拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブが国際社会によって支持されたことを歓迎。
  • 現時点では9か国に債務救済の適用が決定されており、総額で、名目価値で150億ドル以上の債務が救済される。
  • 市民社会の参加を得ながら、債務国が貧困削減戦略を策定することが重要。多くの重債務貧困国が軍事的紛争のため、貧困削減が妨げられ、債務救済が遅れていることを憂慮。
  • 国際金融機関による債務救済に必要な資金確保の進展に留意。約束した資金をできるだけ早く提供するコミットメントを再確認。その際公正な負担の分担の重要性を認識。


(保健)

  • 保健は繁栄の鍵。エイズ、結核、マラリア等の感染症・寄生虫症と闘うため、各国政府 、国際機関、産業界、市民社会等とのパートナーシップを強化して、以下の3つの国連の目標を達成するよう努める。また、これらの目標を達成するため、WHO等と協力する。  
    −2010年までに若年HIV/エイズ感染者数を25%削減  
    −2010年までに結核による死者と有病率を半減  
    −2010年までにマラリアによる病気の負担を半減
  • 援助を拡大するという日本等による最近の発表を歓迎。
  • 今秋日本で開発途上国等の参加を得て会議を開催。


(教育)

  • 貧困削減達成のためには、教育が不可欠。
  • 2015年までに皆が初等教育を、2005年までに教育における男女平等を達成するための二国間や国際機関等との努力を強化。また、ITを活用。


貿易

  • 多角的貿易体制の利益拡大のため、途上国、特に後発開発途上国の正当な関心に対応する必要あり。WTO協定の実施問題、後発途上国への市場アクセス等の分野で早急に進展 を図る。特に、貿易に関連する能力向上を大幅に拡充。
  • 全てのWTO加盟国の関心を反映し、野心的かつバランスのとれた幅広い議題を扱う新ラウンドの立ち上げに強くコミット。新ラウンドの目的として、(1)市場アクセスの改善、(2)WTOルール・規律の発展・強化、(3)途上国への支援、(4)貿易政策と社会政策、貿易 政策と環境政策が両立し、かつ相互に支持的であることの確保、の4点に合意。
  • 新ラウンドの年内立ち上げに向け、他のWTO加盟国とともに努力するために、協力を強化することに合意。
  • 国際的・国内的政策の一貫性の向上、国際機関間の協力強化。市民社会との関係を重視 。
  • 中国のWTO加盟の進捗を歓迎。他の加盟申請国の加盟に向けた努力を支持。


文化の多様性

  • 文化の多様性は、社会や経済の活力の源泉。
  • 無形遺産を含む文化遺産の保護と振興が重要。開発途上国やユネスコ等の活動を奨励。
  • 文化遺産のデジタル化を推進。
  • 異文化や非母国語の教育に関するG8教育大臣会合の成果を歓迎し、今後10年間で学生等の交換を倍増するよう奨励。


 

21世紀の一層の心の安寧に向けて

犯罪及び薬物

  • 国際組織犯罪(TOC)条約の年内の採択を支持。
  • サイバー犯罪などのハイテク犯罪対策が重要。日本で開催される第二回官民ハイレベル会合に期待。
  • 薬物及び原料物質の不正流用等に対する国際的な協力を強化。年内に麻薬専門家の会合を開催。
  • 資金洗浄を含む金融犯罪に対し、国内的及び国際的行動をとる。
  • 汚職に対抗するために、国連における交渉開始に向けて準備。
  • 途上国及び社会的弱者(被害者を含む)支援が重要。


高齢化

  • すべての年齢層の人々が自らの社会との関わり方を決定する自由が重要。「活力ある高齢化」はその際の指針。
  • 年齢に伴う経験と知識を評価する文化の推進が課題。このため、阻害要因を取り除き、雇用における偏見に対抗し、コミュニティ活動及びボランティア活動への高齢者の参画を推進する。

生命科学

(バイオテクノロジーと食品安全)

  • 科学とルールに基づいたアプローチの確立に向け、コーデックス食品規格委員会等の作業を加速化。
  • すべての利害関係者が関与し、先進国と途上国がともに参加する政策対話が重要であり 、OECDにおける作業はその有益な一歩。FAOとWHOにおける協議も奨励。
  • 開発途上国のキャパシティ・ビルディングに対する支援を強化し、これらの国々の状況に適応した技術開発を奨励。
  • 関係当事者との間の開かれた、透明性のある協議。OECDエジンバラ会議の成功を踏まえ、科学的知見を国際的なコンセンサスの構築に統合する方途を探求。

(ヒトゲノム)

  • 生命科学の前進は人類の生活の質を改善。
  • 人間のDNA配列に関する基礎的な生データの迅速な更なる公開を要請。
  • 多数国間の協力に基づいたゲノムの機能解析は重要。
  • 遺伝子関連の発明に関する均衡のとれた衡平な知的所有権保護が必要。特許政策の調和のための、関連する国際フォーラムにおける更なる努力を奨励。

環境

  • 「京都議定書」の早期発効のための協力に強くコミット。COP6の成功を決意。
  • 途上国における再生可能エネルギーの普及のためG8間や既存の機関との間で協力。
  • 地域社会による持続可能な森林経営の実施に対する支援プロジェクトを重視。
  • 輸出信用の環境指針作成に向けたOECDの作業を次回サミットまでに完了させるとのコミットメントを再確認。
  • 海運の安全を改善するためにG8が共同で国際海事機関(IMO)と協力。

原子力安全

  • 原子力安全基金贈与協定の完全な実施が重要。

 

21世紀の一層の世界の安定に向けて

紛争予防

  • 地球社会全体で「予防の文化」を推進。
  • 紛争の平和的手段による解決を推進。
  • G8外相が合意した具体的措置の実施にコミットするとともに、更なる措置の検討を要請。
  • ダイヤモンドの不正取引が武力紛争や人道的危機を助長していることを懸念。対策検討のための国際会議の開催を提案。
  • 小型武器に関する国連会議の成功に向け支援。通常兵器の輸出について自制と取組が必要。

軍縮、不拡散及び軍備管理

  • 2000年核兵器不拡散条約(NPT)運用再検討会議の成功を歓迎。NPTの堅持・遵守を確認。
  • 包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効、カットオフ条約の即時交渉開始と5年以内の妥結を追求。
  • 対弾道ミサイル・システム制限条約(ABM条約)を維持・強化する中での戦略兵器削減条約(START)プロセスの進展を期待。ロシアによるCTBT及びSTARTU批准を歓迎。
  • 余剰プルトニウム管理・処分に関し、米ロ合意を歓迎、次回サミットに向けて国際的資金調達計画の策定と多数国間枠組みの構築を目指す。
  • 大量破壊兵器及びその運搬システムの拡散防止のための世界的な体制の強化を歓迎。ミサイル拡散抑制のための更なる措置の検討が必要。
  • ロシアの化学兵器廃棄計画に対する貢献増大を検討。
  • 生物兵器禁止条約検証議定書交渉の2001年早期の妥結を目指す。

テロ

  • あらゆる形態のテロを非難し、これと闘う決意を確認。情報交換の強化、テロ資金供与対策等の協力を呼び掛ける。テロ資金供与防止条約の採択を歓迎。12のテロ対策条約締結を呼び掛け。
  • ハイジャック、人質事件などのテロ活動の増加を懸念。緊密な協力を確認。
  • アフガニスタンのタリバーンの支配領域を拠点とするテロに対する懸念を強調。

次回会合

  • 明年ジェノバ(イタリア)で開催。

    (了)