平成12年エイズ発生動向年報
−総括−
厚生労働省エイズ動向委員会
(1) | 1996年以降増加を続けてきたHIV感染者の報告数は、2000年にはやや減少したが、報告数は過去2番目の高い値を記録した(図1)。HIV感染者の増加は、日本国籍男性の増加が中心であり(図2)、2000年のHIV感染者報告例では、日本国籍男性が73%を占めた(図3)。感染経路では、異性間感染が2000年にやや減少したが、同性間感染は増加した(図4)。2000年のHIV感染者報告例中、異性間の性的接触による感染は37%、同性間の性的接触は47%を占め、同性間が異性間を上回った(図5)。推定される感染地域は、日本国籍者の80%が国内感染であった(図6)。 日本国籍男性に国内での性的接触による流行が続いており、異性間及び同性間の性的接触による感染防止に向けた積極的な対策を進めなければならない。 |
(2) | AIDS患者の報告数は、1998年を除けば発生動向調査開始以来ほぼ一貫して増加を続けている(図1)。増加の中心は、日本国籍男性であり(図2)、2000年のAIDS患者報告例では、日本国籍男性が73%を占めた(図3)。感染経路では、同性間の性的接触が増加し(図4)、2000年のAIDS報告例中、異性間性的接触による感染が49%、同性間の性的接触による感染が22%を占めた(図5)。日本国籍者における推定感染地域は73%が国内での感染例であった(図6)。 わが国で、異性間及び同性間の性的接触によるAIDS患者は増加の傾向が続いている。早期発見、治療を促進する体制の整備を進める必要がある。 |
(3) | 2000年の報告例の内、外国国籍者の占める割合はHIV感染者では20%、AIDS患者では21%であり(図3)、出身地域としては、東南アジアが最も多いが減少しつつあり、ラテンアメリカの比重が高まっている。外国国籍者に対する対策も強化する必要がある。 |
(4) | 感染経路は、HIV、AIDSともに性的接触による感染が大半であり、静脈注射薬物濫用や母子感染によるものはいずれも1%未満にとどまっている(図5)。しかし、静脈注射薬物濫用による感染の拡大は極めて急速であり、また薬物乱用者で回し打ちが高頻度に行われていることが疫学研究でも明らかであり、引き続き監視が必要である。 |
(5) | HIV感染者の報告地は、東京、関東・甲信越ブロックが依然多く、1999年報告例では76%を占めているが、関東・甲信越ブロックでは2000年に報告数が大きく減少した。一方、HIV感染者は近年近畿ブロックの報告数が増加傾向にある。AIDS患者は、北海道・東北及び北陸ブロックを除く全てのブロックで増加を続けている(図7)。こうした地域特性に配慮した対策の展開が望まれる。 |