平成13年エイズ発生動向年報−総括−

 

厚生労働省エイズ動向委員会

 

  1. エイズ動向委員会は、3ヶ月ごとに委員会を開催し、都道府県等からの報告に基づき患者発生動向を把握し公表している。今般、平成13年1年間の発生動向を取りまとめたので報告する。

  2. 平成13年の発生動向については、分析結果に詳細に述べられているが、委員会として特に注目した点は以下の通りである。


(1)

 HIV感染者の報告数は、1996年以降増加を続け、2001年は過去最高の報告数(621件)となった(図1)。HIV感染者の増加は、日本国籍男性の増加が中心であり、日本国籍女性も緩やかな増加傾向にある(図2)

 2001年のHIV感染者報告例では、日本国籍男性が76.5%を占めた(図3)。推定される感染地域は77.9%が国内感染で(図4)、日本国籍例では85.7%を占めていた。感染経路は、同性間の性的接触が50.6%、異性間の性的接触が34.3%で、性感染によるものが84.9%(図5)を占めた。

 日本国籍男性に国内での流行拡大が続いており、同性間および異性間の性感染防止に向けた積極的な対策を進めなければならない。


(2)

 AIDS患者の報告数は、1998年には減少に転じたが、再び増加し、2001年は過去最高(332件、図1)となった。2001年のAIDS患者報告例では、日本国籍男性が66.6%を占め(図3)、推定感染地域は60.8%が国内での感染例であった(図4)。感染経路は、異性間性的接触による感染が41.9%と多いが、同性間の性的接触による感染は27.4%を占め(図5)、増加しつつある。

 わが国におけるAIDS患者は依然増加傾向にあると思われ、今後の推移を注意深く見守るとともに、早期発見、治療の体制の整備を進める必要がある。



(3)  2001年の報告例の内、外国国籍例の占める割合はHIV感染者では15.5%、AIDS患者では26.2%であり(図3)、出身地域としては、東南アジアが最も多く、ラテンアメリカがそれに次いでいた。特に、AIDS患者では男性が漸増傾向にあり、外国国籍者に対する対策も強化する必要がある。

(4)

 感染経路は、HIV、AIDSともに性的接触による感染が大半であり、静注薬物濫用や母子感染によるものはいずれも1%以下にとどまっている(図5)。しかし、静注薬物濫用による感染の拡大は極めて急速であるため、引き続き監視が必要である。


(5)

 報告地は、東京、その他の関東・甲信越ブロックが依然多く、2001年報告例ではHIV感染者の66.0%、AIDS患者の69.6%を占めている。また、HIV感染者は北陸を除く全てのブロックで増加し、特に東京、近畿、東海ブロックでの増加が目立った。AIDS患者では東京、近畿ブロックで増加していた(図6)

 HIV感染は、これまでの東京を中心とする関東・甲信越地域の流行に加えて、東海、近畿地域においても感染拡大の傾向がみられ、これらの地域特性に配慮した対策の展開が望まれる。