平成11年エイズ発生動向年報−総括−

厚生省エイズ動向委員会

 

1.エイズ動向委員会は、2ヶ月ごとに委員会を開催し、都道府県等からの報告に基づき患者発生動向を把握し公表している。今般、平成11年1年間の発生動向を取りまとめたので報告する。

2.平成11年の発生動向については、分析結果に詳細に述べられているが、委員会として特に注目した点は以下の通りである。

  1.  HIV感染者の報告数は、1996年以降増加を続け、1999年は過去最高の報告数(530件)となった(図1)。HIV感染者の増加は、日本国籍男性の増加が中心であり、日本国籍女性も緩やかな増加傾向にある(図2)。
     1999年のHIV感染者報告例では、日本国籍男性が72%を占め(図3)、推定される感染地域も日本国籍者の79%が国内感染であった(図4)。感染経路は、性的接触による感染が77%(図5)を占め、特に日本国籍男性では84%を占めていた。
      日本国籍男性に国内での流行拡大が続いており、異性間および同性間の性感染防止に向けた積極的な対策を進めなければならない。

  2.  AIDS患者の報告数は、発生動向調査開始以来はじめて1998年には減少に転じたが、1999年は再び増加した(300件、図1)。1999年のAIDS患者報告例では、日本国籍男性が71%を占め(図3)、日本国籍者における推定感染地域は69%が国内での感染例であった(図4)。感染経路は、異性間性的接触による感染が55%と多く、同性間の性的接触による感染は18%であった(図5)。
      わが国におけるAIDS患者は依然増加傾向にあると思われ、今後の推移を注意深く見守る必要がある。

  3.  1999年の報告例の内、外国国籍者の占める割合はHIV感染者では20%、AIDS患者では25%であり(図3)、出身地域としては、東南アジアが最も多く、ラテンアメリカがそれに次いでいた。外国国籍者に対する対策も強化する必要がある。

  4.  感染経路は、HIV、AIDSともに性的接触による感染が大半であり、静脈注射薬物濫用や母子感染によるものはいずれも1%以下にとどまっている(図5)。しかし、他国の経験でも静脈注射薬物濫用による感染の拡大は極めて急速であるため、引き続き監視が必要である。

  5.  HIV感染者の報告地は、東京、関東・甲信越ブロックが依然多く、1999年報告例では76%を占めている。また、近年近畿ブロックの報告数が増加傾向にあり、九州ブロックでも増加の兆しが見られている(図6)。地域の状況に応じた機敏な対策の展開が望まれる。