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2003年度版

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2003年末現在の世界のHIV/AIDS流行状況

世界規模のHIV/AIDSの流行によって、2003年には、300万人以上が命を落とし、500万人が新たにHIV(human immunodeficiency virus:ヒト免疫不全ウイルス)に感染したと推計される。その結果、世界中でHIV/AIDSと共に生きる人々は4000万人に上っている。


世界の対応は、過去2-3年において、目覚しく拡大してきた。政治的決断・実行が強化され、草の根レベルの運動がより精力的になっている。治療プログラムが実施され始め、予防対策も拡大されてきている。抗HIV薬等の提供を拡大し始めた国も多い。しかしながら、地球規模の流行拡大の深刻さを考えると、世界のHIV/AIDSへの対応の現在の速度と範囲では、必要なものには到底及ばない。エイズとの闘いは岐路に立っている。現在の遅い歩みを速めて、われわれの知識・資源・コミットメントの全てをエイズとの闘いに向けなければならない。

UNAIDS(国連合同エイズ計画)およびWHO(世界保健機関)は、2005年までに300万人が抗HIV治療を受けられるように、包括的国際戦略『3×5(スリー・バイ・ファイブ)構想』を開発している。この目標を達成するためには、あらゆる資源および政治的決断を飛躍的・継続的に拡大する必要がある。この目標達成のための施策は、治療提供が平等であること、および、貧しく軽んじられてきた社会階層に属する人々(特に女性)に利益をもたらすものであることを保障するものでなければならない。同時に、予防プログラムを大規模に促進することが緊急に必要である。より効果的な予防とより広範な治療アクセスの拡大は密接に関係していなければならない。予防対策はHIVの拡大を遅らせ、抗HIV治療はエイズの衝撃的影響を緩和するからだ。

 HIV/AIDSに関する基礎知識は近年若者の間で高まっているが、まだ低いことが懸念されている。自発的カウンセリング・検査サービスがないところが多すぎる。深刻な影響を受けている国々の中で、母子感染予防サービスを利用できるのは、妊婦のほんの1%に過ぎない。またHIV/AIDSの影響により孤児になった子供たちのための適切なケアを提供するプログラムは無いに等しい。これらのサービスを拡大することが、緊急の課題である。

 サハラ以南アフリカ以外では、中国・インドネシア・パプアニューギニア・ベトナム・中央アジア数カ国・バルト海諸国・北アフリカにおいて、流行拡大が顕著である。注射器による薬物使用が高いレベルで行われているところでは、HIV/AIDSの流行拡大が突然爆発的に起こりうる。IDU(Injecting Drug Users:注射器による薬物使用者)およびMSM(Men who have Sex with Men:男性とセックスする男性)は、現実には、どこにでも存在していて、汚名を着せられていて、存在を否定させられている。IDUおよびMSMは南北アメリカ・アジア・北アフリカ・ヨーロッパの多くの地域において流行拡大の特徴であり続けている。しかしながら、流行拡大においてこの感染経路が顕著であるというエビデンス(証拠)があっても、HIV動向調査・研究・予防・ケア・支援活動は、MSMおよびIDUを回避することが多い。このような環境においては、差別と偏見がエイズの潮流を変える努力を妨げる障害の中でも、大きなものと位置付けられる。
  • 世界地域別HIV/AIDS生存者数推計

世界の地域別のHIV/AIDS状況

サハラ以南アフリカ

サハラ以南のアフリカは、HIV/AIDSに影響を最も受けた地域である。2003年、この地域では約2660万人がHIVと共に生きており、このなかには昨年新たに感染した320万人も含まれている。2003年、エイズによって約230万人が亡くなった。

サハラ以南アフリカではここ数年、ほとんどの地域でHIV陽性率は高いレベルで横ばい状態が続いている。これは新たにHIVに感染する人数が高いレベルで持続しており、それがエイズによる死亡者数の高さと釣り合っているためである。アフリカ南部一帯では、一般人口におけるHIV陽性率の非常に高い状態が続いている。アフリカ南部以外のサハラ以南アフリカ諸国でも、HIVの流行は足場を固めており、弱まる兆しはない。

HIV陽性率は、モーリタニアの1%未満から、ボツワナとスワジランドのほとんど40%と、アフリカ全体でかなり幅がある。南部アフリカのほとんどの国では、妊婦の5人に1人以上がHIVに感染している。西・東アフリカの数カ国(とくにセネガルとウガンダ)では、継続的な予防対策によって、HIV/AIDSは人間の介入によって抑制できるということが実証され続けているが、同様のことが南部アフリカでも可能であるか否かは分からない。

この地域の流行は変化しており、多様である。現状の把握およびHIV拡大を防止する介入とともに、その原因を正しく理解しなければならない。社会経済的・文化的な不平等といった構造的要素が、効果的な対応を妨げている。近年、政治的支援の高まり、強力な政策策定、財源の増加、およびエイズの社会への影響を緩和する動きが見られる。流行拡大を打倒しようとするなら、この機運を維持していかなければならない。

東ヨーロッパと中央アジア

東ヨーロッパと中央アジアにおけるHIV/AIDSの流行拡大は衰える兆しがない。2003年、約23万人が新たにHIVに感染し、HIVと共に生きる人々は150万人になった。エイズは昨年、約3万人の命を奪っている。

 最も被害が大きいのは、ロシア連邦とウクライナ、バルト海沿岸諸国(エストニア、ラトビア、リトアニア)だが、HIVはベラルーシ、カザフスタンにも広がっており、最近では、カザフスタンとウズベキスタンでの流行が顕著である。ロシア連邦では現在、約100万人の人々(15-49歳)がHIVと共に生きていると推定される。

流行を後押しているのは、危険な行動が高いレベルで続いていることであり、特に若者の間の薬物注射と安全でないセックスである。MSM間およびより高い感染リスクにさらされている集団の間で、隠れた流行が広がっているのではないかという懸念がある。

この地域の国々で比較的新しい現象である薬物注射は、急激な社会変化と、拡大する不平等、国境を越えた麻薬の不法取引網が形成されるなかで根付いていった。いくつかの推定値によれば、注射器による薬物使用者数はロシア連邦だけで300万人ほど、ウクライナでは60万人を超え、カザフスタンでは20万人以下であるとされる。

アジア太平洋地域

2003年、アジア太平洋地域では、100万人以上の人々が新たにHIVに感染し、現在、この地域でHIVと共に生きる人々の数は、推定で740万人に達している。また、2003年におけるこの地域におけるエイズによる死亡者数は、推定で50万人に及ぶ。

 この地域の大多数の国では、国家レベルの成人HIV陽性率は、未だ1%以下であるが、この数字は、誤解を招く恐れがある。なぜなら、この地域のいくつかの国々は国土も広大であり、人口も多いため、全国レベルの総計では、州や省レベルの流行の深刻な実態がぼやけてしまうからである。たとえば、インドの国レベルの成人HIV陽性率は、1%以下だが、5つの州では成人の陽性率が1%以上に達していると推定される。さらに、いくつかの国では、深刻なHIV感染増加の可能性があることを警告する兆候も増えつつある。

最近までHIVがほとんど、あるいは、まったく存在しなかった地域や国々に、流行拡大が進行しつつある。中国・インドネシア・ベトナム(15億人の人々が暮らす)等である。これらの新たに発生している流行の大部分がIDU(注射器による薬物使用)を要因とするものであり、さらに商業的セックスを通じて、HIV感染が広がっている。中国では、IDU(注射器による薬物使用者)間のHIV陽性率が高いことが判明している地域もあり、新疆地区では、35~80%、広東省では、20%に達している。また、1990年代に安全でない献血(供血)が横行したため、深刻なHIVの流行が悪影響を及ぼしているコミュニティーもある。

南アジアにおけるHIV/AIDS流行拡大においては、インドの状況が依然として最重要な役割を果たしている。同国の2002年末現在の推計感染者総数は382-458万人であり、2003年の新規感染者推計数は、少なくとも30万人である。マハラーシュトラ州・タミール・ナドゥ州(都市によってはセックスワーカー間のHIV陽性率が50%以上という調査結果もある)およびマニプル州(IDU間のHIV陽性率が60%~75%に及ぶ)などの州を含む。さらにHIV/AIDSは、弱い立場に置かれた人々、または都市部に限定されているわけではなく、次第に農業地域やより幅広い国民層に広がっている。
カンボジアやタイなど、流行がすでに長く続いている国においては、現在、ハイリスク行動を取る人々からその性交渉の相手にHIVが相当拡大している。

ラテンアメリカおよびカリブ海沿岸地域

ラテンアメリカおよびカリブ海沿岸地域では、200万人以上の人々が現在HIVと共に生きており、この中には昨年度新たにHIVに感染したと推測される20万人の人々が含まれている。また昨年1年間で、少なくとも10万人の人々がエイズにより死亡しており、これは地域単位の死亡者数としては、サハラ砂漠以南アフリカ、アジアに次いで多くなっている。

 同地域では、12ヶ国で国レベルのHIV陽性率が1%以上に達しており、この12ヶ国すべてがカリブ海沿岸地域の国々となっている。最新の推定によれば妊婦間のHIV陽性率は、バハマ、ベリーズ、ドミニカ共和国、ギニア、トリニダード・トバコ、ハイチの6カ国では2%以上に達している。それとは対比的に、同地域のその他の大多数の国々では、特定地域・特定人口集団においてのみ流行が発生している。

すべての主たる感染形態がほとんどの国で同時に存在しており、若年での性行為の開始、複数の相手との無防備なセックス、不潔な薬物注射器の使用などのリスクの高い行動も相当高いレベルに達している。南アメリカ諸国の大半でHIVは、主に注射器による薬物使用、あるいは、男性間のセックス(その後、他のセックスパートナーへの異性間感染も伴う)により感染拡大している。

男性間のセックスは、ラテンアメリカの流行において重要な要素だが、軽視されている。多くの国々でエイズ対策が最近になって強化されているが、同地域で所々に発生している経済的・社会的不安がこれらの対策に悪影響を与える可能性もある。偏見と差別が依然として最も大きな障壁となっている。最も弱い立場の人口グループ(MSMやセックスワーカーなど)に対する予防及びケア活動に対して投入される資金が、HIV流行拡大におけるこうしたグループが有する重要性に、未だ釣り合っていないことが示されている。

北アフリカおよび中東

最近の推定によれば、北アフリカおよび中東地域では、昨年1年間で5万5000人がHIVに感染し、HIV/AIDSと共に生きる人の総数が60万人に達するとされており、これは、この地域は全世界的なHIVの流行を回避しているという認識を裏付けるものではない。また、エイズによる新たな死亡者数は、2003年には4万5,000人に達している。この地域においてHIV感染者数が大幅に増加する可能性がある。

この地域の大多数の国々では、HIV流行の拡大は初期段階にあると思われるが、いくつかの国ではサーベイランス・データが不足しているため、特定の人口集団(MSMおよびIDU)の間で深刻な感染拡大が起きていても見過ごされている可能性もある。

この地域におけるHIV陽性率は未だ非常に低いが、例外的にスーダン南部およびその他のいくつかの国では最近、IDU間で感染が急増している。サーベイランス制度が改善されている国もあり、積極的な予防対策の事例も増加しつつあるが、否認と偏見が、HIVの拡大にとってうってつけの環境を形成している。

高所得国

西欧諸国も含め高所得国地域の年間エイズ死亡者数は、抗HIV療法が幅広く利用できるようになったおかげで減少し続けている。その結果、HIVと共に生きている人々の総数は160万人と推定されており、この中には2003年に新たに感染した8万人の人々が含まれている。昨年1年間で、約1万8,000人の人々がエイズにより死亡している。

 一方で、いくつかの高所得国における予防活動が、HIVの拡大において、起こっている変化に追い付いていないという証拠も、次第に明らかになっている。移民や難民などの社会的弱者の集団に対する予防活動が特に不充分である。HIV/AIDSの影響を受けているすべての人々に届くように、予防・治療・ケアプログラムを調整することが重要である。特に、言語・文化の違い或いは移民であることなどから、サービスに対するアクセスが制限されている可能性のある人々に届くように、予防・治療・ケアプログラムを調整することは非常に重要である。

近年の継続傾向のひとつだが、HIV以外の性感染症の発生率が増加している。これは、HIV感染の新たな増加の前触れの可能性もある。HIV以外の性感染症がオーストラリア、日本、西ヨーロッパ、アメリカ合衆国で再び増加していることから、特に若い人々の間でのハイリスクな性行動が復活していることが示されている。1990年代に特にMSMの間でHIV感染の防止に顕著な成功を収めた予防プログラムに対する関心が、多くの高所得国で低下しているように思われる。

HIV/AIDSに関する地域別推計値・特徴、2003年末現在

地域 HIV感染者・AIDS患者数 新規HIV感染者数 成人HIV陽性率(%)* AIDSによる死亡者数
サハラ砂漠以南
アフリカ
2,500-2,820万人
300-340万人
7.5-8.5%
230-240万人
北アフリカ・中東
47-73万人
4.3-6.7万人
0.2-0.4%
3.5-5万人
南・東南アジア
460-820万人
61-110万人
0.4-0.8%
33-59万人
東アジア・太平洋
70-130万人
15-27万人
0.1-0.1%
3.2-5.8万人
ラテンアメリカ
130-190万人
12-18万人
0.5-0.7%
4.9-7万人
カリブ海沿岸
35-59万人
4.5-8万人
1.9-3.1%
3-5万人
東欧・中央アジア
120-180万人
18-28万人
0.5-0.9%
2.3-3.7万人
西欧
52-68万人
3-4万人
0.3-0.3%
2,600-3,400
北アメリカ
79-120万人
3.6-5.4万人
0.5-0.7%
1.2-1.8万人
オーストラリア・
ニュージーランド
1.2-1.8万人
700-1,000
0.1-0.1%
100未満
合計
4,000万人
(3,400-4,600万人)
500万人
(420-580万人)
1.1%
(0.9-1.3%)
300万人
(250-350万人)

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* 成人(15-49歳)、2003年人口統計を利用して算出推計値の右側の( )内の範囲に実際の数値が存在する。

推計値・範囲は現在入手可能な最良のデータを基にして算出したものである。これらの数値は昨年の数値よりもより正確であるが、2004年中期に発表予定の推計値では、より一層の正確性を期する努力を行っている。

UNAIDS/WHO報告の詳細は、UNAIDSホームページ (http://www.unaids.org) のAIDS Epidemic Update 2003のコーナーをご覧下さい。

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